研修先は、ロンドンから電車とバスを乗り継いで2時間の所にあるノッティンガムシャーのアプトンという小さい村の「時計博物館」だった。 アプトンホールと呼ばれる1828年に建てられた建物の中にあり、運営しているのは英国時計協会。古いものから現代のものまで様々な時計のコレクションはもちろん、5,000冊以上の蔵書を持つ図書室、宿泊施設等も備えた建物も「アンティークそのもの」のような所だった。 アンティークの中でも時計を選んだのは、以前、ヨーロッパ旅行をした時に目にした数々の装飾を施された時計がとても印象深かったからだ。 以前から腕時計に興味を持っていたこともあり、時計に関する勉強ができるところを探してもらった。 博物館では、日曜日には来館者が時計に触らないように監視するミュージアム・スチューワード(触ろうとする年配男性の多いのには驚かされた!)お土産の販売や喫茶コーナーの手伝いなどをした。 平日は、書類作成やイベント準備が主な仕事で、時にセミナーにも参加した。 この研修で最大の出来事は、ビッグベンの見学。 アプトンのスタッフと一緒に狭い階段を上り、ムーブメント(機械装置)や鐘を見たり、目の前で鐘が鳴るのを聞いたり、文字盤の裏側に入りこんだりと、普通の観光客ができないことを体験させてもらった。 もちろん、異文化で生活することの大変さも、体験した。まず、言葉の壁。最初の数ヵ月は英語で頭がいっぱいになり、特に何もしていないのに非常に疲れた。 そして、「時計博物館」という性格上、全国から様々なアクセントで喋る人たちが来訪してくる分、慣れるのに苦労したことも事実。 その他、「日本人はトイレに行く時間も惜しいので、おしめをして働いている」などという悪意に満ちた新聞記事やテレビ番組を見て、不愉快な思いをしたこともあった。 だが、日本を外から見て初めて、自分が日本人であることを誇りに思うようになり貴重な体験になった。 短い日々ではあったが、この研修で私の世界が大きく広がったと思う。 自分のことを気にかけていてくれる人たちが海の向こうにいるということも、数年前には想像できなかったことだ。
研修場所:時計博物館
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