小学校の音楽の先生をしいて、趣味で陶芸を習い続けてもう20数年になる。 二人の息子をアメリカ留学に出し、「自分もいつか行こう」という夢を育んできた。「年齢なんて関係ないよ」と息子に励まされ、思い切ってこの夏休みにイギリスへ。 滞在先はヘレフォード州のLedbury、陶芸工房を営んでいるマークとキャロラインの家だ。 私たちが半磁土と呼んでいる磁器と陶器の半々くらいの土を使って、壺やお皿を作っていました。 工房では何を作ってもいいと言われたけれど、土が違うので、センタリング(土を成型しやすくする作業)がむずかしくて、なかなか形にならないんです」それでも手びねりをやっていた経験がものをいって、フットという高台を付ける技術をマスターでき、彼らが忙しいときには作業を手伝うこともできた。 Ledburyは小さな町だが、レンガやブラック&ホワイトの美しい家が点在し、近くにはクラフトショップやギャラリーも。 1週間90ポンドでレンタカーを借り、思う存分、西へ東へ。ホストが地図にたくさん書きこみをしてくれて、それを頼りに走りまわりました。小さな丘やファームの風景がどこに行っても本当に素晴らしくて、ああ、生きていてよかったと実感する毎日でした。 道中立ち寄った別の陶芸工房では、日本の益子焼きや浜田章司の名前が話題になり、「Tenmoku」(天目)という名の黒い釉薬を使った器も並べてあって、日本の陶芸との交流の歴史にも思い至る。 研修先と滞在先が同じだということに、最初はとても不安を感じていたホームステイだったが、「言葉の問題もあってついこちらは遠慮してしまいがち。忙しいとか、頭が痛いとか言われると、それは自分のせいか思ってオロオロしてしまうこともありました。 食事も毎日シリアルやサンドイッチで、日本人にはとても質素に感じます。 でもそういうギャップを乗り越えて、最初から彼らは私を家族として迎え入れようとしてくれたんです。滞在が終わるころ、マークがお母さんの手作りだという古びたクロスや針刺しを出してきた。 伝統的なニードルポイントの刺繍がしてある。新しいものではなく古いものこそを大事にするという、イギリスの象徴のようなものでした。 その針刺しは私へのプレゼントになった。
研修場所:陶芸工房
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